子宮頸部異形成とは
当科には子宮頸部異形成の患者様が多数通院されておられます。婦人科腫瘍専門医が綿密な検査・経過観察・治療をおこなっております。
子宮頸部異形成とは:簡単に言い換えますと子宮頸がんの「何歩か手前」の状態です
子宮頸がん健診では子宮頸部(上の図の子宮の出口の部分)をこすって細胞診に提出します。細胞診では細胞の形をみて「がん」か「正常」かを判断します。
子宮頸部細胞診:H-SILの細胞診の例
異形成とは「がん」と「正常」の中間の状態です。子宮頸部異形成には3段階あり 軽度異形成(CIN1) 中等度異形成(CIN2) 高度異形成(CIN3)に分かれます。高度異形成(CIN3)は子宮頸がんの一歩手前の状態です。
細胞診に異常が認められた方は後述するコルポスコープ検査を受ける必要があります。そこで組織診を行い、確定診断を行います。
子宮頸がんであればすぐに治療が必要です。しかし、子宮頸部異形成は「がんの何歩か手前」の状態ではあっても治療の必要がないことが多いです。なぜならば大多数の方の子宮頸部異形成は何も治療を行わなくても自然に治ってしまうからです(ただし数年の時間かかることが多いです)。
しかし、どの方が高度異形成や子宮頸がんに進行するかまでは現在の診断技術ではわかりません。軽度異形成(CIN1) 中等度異形成(CIN2)と診断された方は3〜6ヶ月毎の定期健診が必要になります。
以下の方は治療(子宮頸部円錐切除など)を受けられることがすすめられます
1)子宮頸部高度異形成(CIN3)の場合
約15-20%が早期のがんへ移行するといわれていますので、子宮頸部高度異形成の診断がついた場合は治療をおすすめしています
2)ヒトパピローマウイルス 16,18,31,33,35,45,52,58型が陽性の方で
子宮頸部中等度異形成(CIN2)が一年以上継続する場合
このような方は5年以内に20%の方が子宮頸部高度異形成(CIN3)に進行するといわれていますので、治療をおすすめする場合があります。
子宮頸部細胞診と組織診について
細胞診
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日母分類
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クラスT
正常
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クラスU
生理的変化炎症
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クラスVa
ウイルス感染の可能性
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クラスVb
→
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クラスW
→
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クラスX
→
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ベセスダシステム
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NILM
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LSIL
ASC-US
AGC
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HSIL
ASC-H
AGC
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HSIL
AIS
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SCC
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組織診
精密検査
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CIN分類
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CIN1
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CIN2
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CIN3
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子宮頚癌取扱規約分類
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軽度異形成
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中等度異形成
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高度異形成
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上皮内がん
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微小浸潤癌〜
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上の表は子宮頸部細胞診の結果の一覧を示したものです。以前はクラス分類(クラス1,2,3,4,5)が用いられてきましたが、現在ではベセスダシステムを用いています。
子宮頸部細胞診の結果が NILM の方は異常がありませんので大丈夫です
L-SIL,H-SIL,ASC-H,AGC,AIS,SCC の場合、直ちにコルポスコープ検査を受ける必要があります
ASC-US の場合は以下をご参照ください
ASC-US(意義不明な異型扁平上皮細胞)について
子宮頸がん健診の結果がASC-USだった場合について説明いたします
細胞診の結果は「異形成があるかもしれない」という結果です。このような場合は子宮頸がんの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)のハイリスクのタイプがいるかどうかを調べます。HPVにはいろんな種類があり番号で表しますがHPV16,
18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59および68型の13種類がハイリスクタイプと呼ばれており子宮頸がんに進行しやすいウイルスです。
そこでASC-USの結果が出た場合はまず ハイリスクHPVに感染しているかどうかの検査(子宮頸部をこするだけの検査です。健康保険3割負担ですと約1,000円です)を行います。その結果により以下のように対処します
ハイリスクHPV 陽性 → 直ちにコルポスコープ検査にて組織診を行う
ハイリスクHPV 陰性 → 1年後の細胞診検査を行う
コルポスコープ検査について
コルポスコープは子宮の出口を拡大視する内視鏡です。内診台にて診察します。診察所要時間は約5分です。
子宮頸部を観察しやすくするために、酢酸を子宮頸部に浸します。若干しみる感じがするかもしれません。
最後に2〜3カ所ほどの子宮頸部組織を数mm角で採取します。採取した後は若干出血しますのでタンポンを挿入して診察終了です。
採取した組織を病理組織診断に提出します。検査結果が出るまでに1週間ほどかかります。
組織診では下の例の写真のように顕微鏡では観察され、細胞の形および配列などを病理専門医が観察し診断を行います。子宮頸部異形成の診断にはコルポスコープ検査は不可欠です。
組織診 子宮頸部中等度異形成(CIN2)の例
子宮頸部円錐切除術について
子宮頸部高度異形成(CIN3)などに対して行う治療です。
子宮頸部を円錐状に切除します。手術時間は約30分です。当科では全身麻酔にて行っており、2泊3日の入院が必要です。
子宮を全部切除しないため、手術後の妊娠、出産も可能です。しかし、この手術の術後は切迫早産の傾向がでることが知られています。そこで、今後の妊娠、出産を考えられている方に関してはとくに子宮頸部を必要最小限のみ摘出するように心がけています。
このような手術を行うためには婦人科病理学に精通している必要があり、当科では婦人科腫瘍専門医がこの手術を担当しています。